磁石とは?


磁石の名前の由来は?

昔は磁石のことを『慈石』と書いていました。
磁石を女性の乳房に例えると、それを吸い寄せる鉄は『わが子』、それを慈しむ母親の姿を連想させることが、その名前の由来と言われています。
現在でも中国では『磁(慈)石』とカッコ付で使用してる場合があります。MRI等を説明している医学書の中にですが、中国ではMRI等の「磁」が医療「慈」として共感を持たれているのかもしれません。
日本に登場する慈石は『続日本紀(8世紀)』で「近江の国より慈石を献ず」とあります。日本でもかなり昔から磁石は特別なものとして扱われてきたようです。

※当時の磁石は当然天然石です。昔の中国や日本で発見されていた磁石は磁赤鉄鉱(マグヘマイト)と呼ばれる鉱石です。


永久磁石、電磁石など磁石全体の定義は?

◆原子をつくる電子の運動によって発生するもの。
◆原子の周りを回る運動と、電子の自転によって磁力が発生しその相乗効果が大きい物質を磁性体(強磁性体)と呼び、磁場の中で反対向きに磁化される物質を非磁性体と呼びます。


永久磁石と電磁石の定義を更に深く分類してみると

【永久磁石】
◆外部からの電気的なエネルギーの供給なしに静磁界を作る物質である。
◆エネルギーを静磁エネルギーの形で蓄えている物質である。
◆磁化しにくく、また一度磁化したら残留磁化を保つ磁性材料である。
◆磁気的に硬い物質である。
◆磁力の量を変えることがでない。

【電磁石】
◆導線の中を電子が動くと磁界ができる。
◆電子が動くことにより、磁界ができる点では永久磁石と同じになりますが、決定的な違いは、磁力の量を変えることができることです。


磁石になりやすい物質は?

物質は電子の運動で原子が磁石になります、しかし、その向きが揃ってない場合には磁力は打ち消しあいます。
ところが、鉄、ニッケル、コバルトなど鉄属の金属は原子の磁石の向きを揃えることができるので、磁気を帯びることができます。
◆ネオジム、サマリウムなどの希土類は強い磁性体である。
◆磁石になりやすい物質を磁界に入れると磁性を帯びます。
◆この場合、磁界出しても磁力を帯びたままの状態のものを一般に永久磁石と呼ばれています。
◆鋼鉄は、磁界から出しても磁力を保持し磁石になります。
◆軟鋼は、高温に加熱した後、ゆっくり冷やすと磁石になります。
◆鋼鉄は、高温に加熱して、水や油で急激に冷やすと磁石になります。


磁界と磁力線って何?


磁極間には力が働きます。力が働くと言うことは、磁極が周りに何らかの影響を及ぼしているということです。影響を及ぼしている場所を磁界(あるいは磁場)という。無論、磁界がどこにあるかを目で見ることはできないが、工夫すると間接的に見ることができます。
 
棒磁石の上に紙を乗せその上に砂鉄を全面に敷き詰めます。
砂鉄は、棒磁石の先端をつないでN極とS極を結ぶ曲線ができあがります。【図A】
この曲線を磁力線と呼びます。
紙と磁石と砂鉄があれば簡単に磁力線を見ることができます。

【図A】

磁力線は、目には見えない磁界を目に見える形に表したものです。
磁極を磁界中に置くと、下図に示すように磁力線の方向に力を受けます。
力の方向はN極とS極で逆方向になりますが、N極を置いた際に受ける力の方向を磁力線の方向と決めることなり、そうすると磁力線の方向は、図Bに示すように、N極からS極に向く方向になります。

以上のことを整理してみました。
◆磁界は磁極により作られる。一方、磁極は磁界から力を受ける。
◆磁界を目で見える形で表したのが磁力線である。磁極が磁界から受ける力の向きをつないで作る。N極からS極の向きに向いている。


【図B】


磁石の磁性

磁石について基本的なものを整理してみます。
◆磁石には2つの磁極がある。
磁石を自由に置くと南北を指して静止します(これは、地球自体が磁石になっているためです)。
◆北を指して止まる側をN極、南を指して止まる側をS極という。
同極同士は反発し合い、異極は引き合う。
どこで磁石を切っても磁力の向きも変わらず同じように磁力を持つ。磁石の磁性は電子の動きで起きています。永久磁石の場合同じように、同方向に回っているのでこのような現象になります。

「なぜ反発力や吸引力が働くか」と疑問を持たれる方がおられるかもしれませんが、これに答えることは「なぜ重力が働くか」に答えるのと同じくらい困難なことです。ここでは、自然界の法則として受け入れてください。


磁石の不思議

磁石は、細かく割れてもS極とN極が存在します。
それは、何故なのか少しばかり触れてみることにします。



◇N極だけの磁石は作れるのでしょうか?

磁石を半分に切ると、N極だけの磁石とS極だけの磁石を作ることができるのでしょうか。
悩むよりやってみるのが早い!結果は、磁石をどんどん小さくしていっても、必ずN極とS極からなる磁石ができてしまう。いったいどうしてこんなことが起こるのであろうか。

物質は、「原子」と呼ばれる非常に小さな粒(1億分の1cm 程度の大きさ)から構成されてます。磁石では、この一つ一つの原子が磁石(原子磁石とよぶことにしよう)になっています。
この原子磁石が「磁石の素」である。磁石の中で無数の原子磁石が整列し、全体として磁石になっています。磁石の中央部では各原子磁石のN極とS極が打ち消し合い磁極は表れませんが、磁石の端では、打ち消し合うことができなため、磁極が表れます。
磁石の端のみが鉄片を引きつけることができるのはこのためで、いくら磁石を小さくしても、磁石の端には必ずN極とS極が表れてしまい、N極だけやS極だけの磁石はできないことになります。


◆磁石の種類


磁石は、単に磁石といっても色々な種類があります。
そのなかでも代表的なものをあげてみました。

【永久磁石の分類】
名称 記号 磁気特性 特徴
Br(KG) Hc(KOe) BHmax(MGOe)
フェライト Baフェライト
(等方性)
Ba-Ferrite 2.2 1.9 1.0 安価、広い用途
Srフェライト
(異方性)
Sr-Ferrite 4.0 2.5 3.6
アルニコ AlNiCo 12.5 0.57 5.0 硬脆、鋳造に適する
希土類 サマリウム系 SmCo5 10.0 9.0 23 高性能、温度特性良い、脆(もろ)い
Sm2Co17 10.3 9.5 25
ネオジム系 NdFeB 12.9 12.4 40 高性能、錆び易い
参考文献 『磁石とその使い方』 著者:谷腰欣司 発行:日刊工業新聞社

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